社会福祉士インタビュー
患者さんとご家族の「くらし」を支えるための
経験とスキルが問われる仕事です。
医療ソーシャルワーカーの仕事は、患者さんとそのご家族の生活についてのサポートが中心です。そういう意味では、他職種との接点が一番多い仕事かもしれません。もちろん院内だけでなく、患者さんの担当ケアマネジャーや地域の各関係機関と連携することで、患者さんが退院後も安心して自宅で生活できるようサポートしていきます。この仕事は、患者さんとそのご家族の現在の問題を解消するために必要な知識と経験が求められています。患者さんを取り巻くさまざまな立ち位置からの意見をまとめるのは大変ですが、その分やりがいも大きい仕事だと感じています。
父の入院がきっかけとなり、
“福祉”に興味を持つようになりました。
ソーシャルワーカーの仕事に関心を持ったのは家族の病気がきっかけです。半年間入院し、何より不安だったのは、家族の今後の生活についてです。母がとても苦労していたのを覚えています。ソーシャルワーカーの仕事については私が福祉系の大学に通っていたこともあり、なんとなく知っていました。こうした経験から私は医療だけでなく、福祉の視点で患者さんとそのご家族をサポートしたいと思うようになりました。これが今の仕事を選んだきっかけです。
患者さんが安心してリハビリに専念できる環境づくりは、
入院前から始まっていることを痛感する出来事でした。
回復期では、急性期での治療を終えられた患者さんがリハビリのために転院されるケースがほとんどです。その中で以前、入院当日になって入院を拒否された患者さんがいらっしゃいました。その方は脳梗塞のため継続的なリハビリが必要と診断されていたのですが「リハビリは必要ない!」の一点張り。受付スタッフに呼ばれた私は急いで現場に駆けつけました。するとその方は、経済的な事情から医療費を支払えないということを私に打ち明けてくれたんです。私はその方に安心していただくため、入院中に使える医療制度の説明や支払いフローなどについて詳しくお話しました。そして無事、申込書にサインをしてくださいました。患者さんが入院される前からのかかわりも、医療ソーシャルワーカーとしての大切な仕事だということを学ばせていただいた出来事でした。
地域と患者さんをつなぐ仕組みが
まだまだ不足していると実感する日々。
当院には「生活困窮者を救う」という病院の理念があります。先ほどお話した方のように、患者さんの中には経済的な理由で医療費の支払いが困難であったり、生活環境によってさまざまな事情で入院を断念される方も少なくありません。当院ではそういった方々を積極的に受け入れ、自宅に戻られた後の生活支援まで一貫しておこなっています。人としての尊厳を第一に考えられる環境が整っているというのは、済生会グループの大きな魅力だと感じています。ただ、それだけでは患者さんと地域をつなぐ取り組みができているとは言えません。既存の制度ではカバーできない患者さんの個別の問題を解決できる地域ネットワークを地域の中で構築することが、今後はますます必要になってきます。私は医療ソーシャルワーカーとして、地域と患者さんをつなぐためのネットワークづくりにも積極的に取り組んで行きたいと思っています。
患者さんの不安を生活面からサポートできるよう、
一緒に取り組んでいきましょう。
今は昔に比べて家族同士の繋がりというのがだんだん薄くなってきています。そういった中で身寄りのない方やさまざまな事情を持つ患者さんを“福祉の視点”からサポートできるのは、この病院で医療ソーシャルワーカーだけだと自負しています。大変な仕事ではありますが、私は医療ソーシャルワーカーという職種をもっともっと多くの人に知っていただきたいです。患者さんと地域をつなぐというやりがいのある仕事なので、ぜひ多くの方に目指していただきたいと思います。